『青のフラッグ』は焦れったいのが面白い~9&10話の感想と共に~
ジャンプ+で連載中の『青のフラッグ』への熱が、どうにもこうにも収まりません。
今回は本作の面白さを中心に、最後の方で9・10話の感想を書きたいと思います。
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今一番オススメしたい漫画
主人公に特別な能力があるわけでも、派手なバトルや強敵をバッタバッタと倒していく爽快感があるわけでもない。
むしろ静かに、登場人物の心に寄り添うように、人間の気持ちの“揺れ”を描いた作品です。
【あらすじ】
主人公である太一は、なぜか苦手意識を持っていたヒロインの二葉から、クラスの人気者である桃真への恋心を打ち明けられ、協力してほしいと頼まれます。 高校3年生、同じクラスになった3人。それぞれの抱える気持ちは、どこへ向かっていくのか。
恋と性の間で葛藤する少年少女の漫画作品 - チョコタフと異世界への冒険
自己肯定感の低い主人公・太一と、その対極にいるようなスポーツ万能でクラスの人気者であり、そして少し疎遠になった幼馴染の桃真。
その桃真に恋心を抱くヒロイン・二葉と、彼女を特別気にかける親友の真澄。
この4人の関係をメインに、物語は進んでいきます。
他人の心は想像することしかできない
現状ではそれぞれが秘めたる思いのほとんどが、言葉として名言されていません。
核心には触れられず、あらゆる想像ができそうな材料が与えられ、こういう気持ちかな?と読者の想像に委ねるような展開。
それだけに焦れったく、早く答えを教えてほしいと思わせます。けれど、実はそうやって、ああでもないこうでもないと、想像を巡らせる余地がある今が、一番楽しいのかもしれません。(結末が分かったら分かったで胃が痛くなりそう…)
学生時代の、まだ恋とも呼べないような甘酸っぱい、純粋な感情のやり取りを見ていると胸がキュンと苦しくなります。
行く先を想像しては苦しくなり、最近では近しいジャンルの作品を読むことで気持ちを落ち着けていました。
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“恋”に恋させられている?
『青のフラッグ』の1巻では、誰が誰に対してどういう気持ちの矢印を向けているのかは仄めかすようにしか描かれていませんが、なんとなくの予想はつきます。
予想がつくともう一度読み返したくなる。なぜなら、KAITO先生は、キャラクターの視線一つ、仕草一つ、台詞一つ、どれをとっても、何かしらの意味を持たせているように描いているから。
ついつい深読みしちゃうのです。
それが楽しくもあり、しかし、一コマずつに一喜一憂して、心がざわついて落ち着かない。
みんなの気持ちをなんとなく予想できるからこそ、読者しか想像し得ない苦しさとか甘酸っぱさとか、キャラクターが純粋で無知であるがゆえに感じてしまう無邪気さもあると思うんですよ。
なんだか、この作品自体に恋をしているような、そんな錯覚すらも起こさせます。
好きな人の些細な言動に振り回されて、思いを巡らせて苦しくなるけれど、ふとした瞬間に、甘いトキメキが訪れる。
そんな恋にも似た、素敵な時間を過ごせる作品だと思います。
彼らは何を“捨てる”のか
恋の選択だけでなく、人生の選択も必要な高校3年生という大事な時期。
彼らの悩みはもちろん恋だけではなく、そこには自分の将来についての不安も付き纏います。彼らが何を選択するのか見届けたい。そんな風に、応援したくなる等身大のキャラクターたちです。
願わくは、彼らの前に横たわる希望全部を抱えて前に進んでいってほしいけれど、選択とは即ち、捨てることでもあります。未来のいくつかの選択肢は捨てなければいけない。
何を選んで、何を捨てるのか。
その時、隣には誰がいて、誰に笑顔を向けて、何を喜んで、そして、何に悲しんで、誰へ涙を見せるのかな。
KAITO先生は優しく丁寧に、時には残酷に、彼らの物語を描いてくれると思うので、彼らに寄り添いながらそっと見守っていきたいです。
以下、ネタバレありで9・10話の感想など。
第9話の感想
体育祭エピソードを締めくくるお話。
桃真が出場するリレーの応援で、頭が真っ白になった二葉を太一がかっこよく支えてくれました。
これまで太一の不器用な面の方が目立っていましたが、回を追うごとに、不器用でありながら繊細な優しさを持っている男の子だなと感じるようになりました。
ちなみに、そんな不器用な優しさを桃真は昔から見てきて、きっと時にはそれに守られて、少しずつ太一のことを特別に感じるようになって、愛おしくなって、それが恋かもしれないと気づいて戸惑っている。それが、私の想像する桃真から太一の気持ちです。どう転んでも切ない。
みんな好きなんだけど、初回からどんどん、どんどん太一が好きになる。応援したくなるなー。「惚れるわ」の言葉は、それこそ、反則。トーマに聞いといてほしかったなー。#青のフラッグ
— チョコタフ (@choco_tough) 2017年4月25日
体育祭では、みんなが友達として自然に距離を詰めていて、微笑ましかったですが、最後のモノローグは、この先の不穏さを暗示しているようで、ドキドキでした。
伊達さんの視線もつらい。写真の意図は、それは、トーマに、せめてもの思い出をということなんだろうか。イェーイってやってるトーマと太一を見てるだけでも、いろいろ考えちゃってつらいよ〜 #青のフラッグ
— チョコタフ (@choco_tough) 2017年4月25日
最後のモノローグは、ふつーに読むと、今の太一の言葉で「キミ」は二葉なんだけど、色々深読みしすぎて、例えば、もう少し先の時系列から体育祭を思い出した時の太一の言葉で「キミ」がトーマだったら?あるいはトーマの言葉で、キミは太一だったら?ここから先、何か起こるんだろうか #青のフラッグ
— チョコタフ (@choco_tough) 2017年4月25日
第10話の感想
彼らは進路にも悩んでいる、というエピソードでしたね。
最初の頃、太一は桃真に声をかけられる度に驚いていたのに、太一が桃真に興味を持つようになって自分から話しかけているのが印象的でした。
太一の気持ちもどんどん変化しているのが分かる。気持ちのベクトルが、トーマに向いてきたのかな。今までは気にしていなかったことが気になる。トーマに対して疑問が出てくる。それって、太一とトーマの距離が少し詰まった証かなと。その距離感にびっくりするトーマもまた好きだ…#青のフラッグ
— チョコタフ (@choco_tough) 2017年5月10日
そして、そんな太一に驚き、戸惑いを見せている桃真がいじらしい。体育祭を経て、自分の進路はこれでいいのか、気持ちはこれでいいのか、といろいろ思い悩んでいるんじゃないかって思います。
トーマが机に突っ伏してたり、練習中に座り込んでたりって、たぶん進路に迷いがあるからじゃないかって思う。プロ野球の道にしろ就職にしろ、体育祭を区切りに太一を追いかけるのをやめる覚悟をしたけど、それができてりゃ苦労しねぇよ、みたいな感じで悩んでるんじゃないかな。#青のフラッグ
— チョコタフ (@choco_tough) 2017年5月10日
太一が応援に行くって行った次のコマで、トーマが一瞬面食らった(たぶん)後、表情を見せないのがずるい。すごい笑顔が、切ない笑顔かどっちかな。冗談に持っていくところがなんか、胸が痛くなる。#青のフラッグ
— チョコタフ (@choco_tough) 2017年5月10日
好きな人に片想いの時って、ちょっと距離が近くなっただけで、その時のことを何度も反芻して、自分の言動が変じゃなかったか、相手のあの言動はどういう意味なのかとかを考えて、これから過ごす相手との時間を想像してみたり、悩んだりすると思うんですけど、桃真もそうなんじゃないかなって。
恋かどうかは分からないけれど、太一のことで思い悩んでいる気がしています。
今までは遠かったから見ているだけで良かったのに、同じクラスになって近くになったからこそ生まれる苦悩と喜び。ああ、甘酸っぱいね。
そして、伊達さんと彼氏が二人でいるところを偶然見かけ、涙する伊達さんに出くわしてしまう太一。
伊達さんの件はもうどうしていいか分からない。これから何が起きるんだ。太一は今後、いろんな難しい選択を迫られるのかなあ。太一に限らず、高校3年生って、選ぶ時期だものね。青のフラッグか毎週更新される世界線に連れて行って欲しい。#青のフラッグ
— チョコタフ (@choco_tough) 2017年5月10日
まさかここでこの二人の間に何か起きると思わないから、どうしたもんかと。
伊達さんだから、彼氏と喧嘩したとか最もらしい理由でその場を凌ぎそうな気もする。けれど、物語的には今回のことをキッカケに、伊達さんの思いが少しずつ紐解かれていくんじゃないだろうか…。
太一は、他人の気持ちに鈍感なわけじゃないと思うので、ふとした言動でもしかしたら、伊達さんの抱える特別な気持ちに気づいてしまうかも。
9話は(おそらく)太一による
きっと この日に関する選択は まちがってなかったと思う
だって たしかに 君は
この日の 最後
笑っていたのだから
というモノローグで締めくくられています。
そして、今回更新された10話の冒頭では
もしも あの時 ああしていたら
そう 思うことが
誰にだって あるだろう?
と語られていて(これも太一かな?)
いずれも、自分の選択に自信がなくて迷っている人の言葉だと感じました。
誰かが誰かを悲しませてしまって、それを悔いているのかな。そんな未来が待っているのだとしたら、ひどく苦しい。
まだ楽しい時間が続くといいなと思います。私はひたすら続きを待つのみ…。
ひとつのエピソードだけでも、想像に想像を巡らせてしまう。
それだけで繊細で彩り豊かな気持ちがつまっている青春の作品です。