恋と性の間で葛藤する少年少女の漫画作品
KAITO先生の『青のフラッグ』に心を持っていかれて、色々な恋愛の形を考える日々です。
みんなの幸せを願う気持ちが強すぎて行き場を失い、ついには他の作品でこの気持ちを落ち着かせるという方法に出ました。
このジャンルをなんとカテゴライズしたらいいか分からなかったのですが、現時点では雑誌の特集名で見た「性のゆらぎ」という言葉が、私の中でしっくりきています。
参照:季刊エス「性のゆらぎ」特集に志村貴子、桃栗みかん、横槍メンゴらインタビュー - コミックナタリー
ということで、今回はそんな、自分の性指向や恋に悩む少年少女の葛藤をテーマに、作品をいくつかをご紹介します。
『放浪息子』(完結済)―僕は女の子になりたかった。
“女の子になりたい男の子”と“男の子になりたい女の子”が出会うところから、物語はスタートします。
「性のゆらぎ」を扱った作品としては、私が初めて出会ったものです。
アニメのCMを見かけた瞬間にビビッときて、漫画もすべて読んでしまいました。
小学生の時代から描かれているので、年齢を重ねるごとに生じる悩みにリアリティもあり、みんなはどこへ行き着くのだろうと、親のような親戚のような目線で見守りながら読んでいました。
久しぶりにまた読み直してみたいな。
『ぼくらのへんたい』(完結済)―体も心も、関係も、変わっていくものなんだ。
中学生の男の子三人が主人公です。
女の子になりたい男の子、亡くなった姉の身代わりに母親を慰めるために女装する男の子、恋をした先輩のために女装を続ける男の子。それぞれ、抱えるものは異なり、求めるものも異なる子たちが出会います。
自分は何者なのかを考えながら、人に惹かれ、恋をして、恋をされ、傷つき、傷つけられながら、大人になっていくまでの物語。
彼らが抱えているものを、自分が、他人がどう受け止めて進んでいくのか。
暗い部分もあるお話ですが、最後まで読み終わった時にはとてもホッとしていました。
『ななしのアステリズム』(完結済)―好きだけど、言わないよ。友達だから。
ななしのアステリズム 1巻【期間限定 無料お試し版】 (デジタル版ガンガンコミックスONLINE)
- 作者: 小林キナ
- 出版社/メーカー: スクウェア・エニックス
- 発売日: 2017/04/21
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こちらはうってかわって、中学生の女の子三人が主人公です。
中学に入学して好きになった人。それは今の友達。
“同性”であるがゆえに恋心を告げられず、友達のままの関係を続けていくつもりでいたけれど・・・。動き出していく関係の中で、友情と恋心の狭間で揺れ動く少女たちの物語です。
人に恋をする純粋な気持ちも感じられて、心がキュンと締め付けられるような読後感です。
なお、私はその周囲にいる男の子たちのピュアさに更に息苦しくなりました。
#ななしのアステリズム の最終巻も読んだんだった。最初は女の子同士だけだと思ってたのが、途中からおやおや??という感じで、弟の昴と朝倉くんが絡むようになって、最後はみんな幸せになってくれればええんや🙏と思うばかりでした。
— チョコタフ (@choco_tough) 2017年4月25日
切なさもあるけれど、今回のおすすめの中では比較的ライトに楽しめる作品だと思います。
※5/14までkindleで無料お試し版を読めます!
『しまなみ誰そ彼』(1~2巻)―君への恋で、ぼくはきっとだめになる。
『青のフラッグ』と同様に、続きが気になって今後の行く末を考えると、心が痛くなる作品です。
舞台は尾道。主人公の男の子が、自分がゲイであることをクラスメイトに知られたのではないかと恐れ、自殺を考えるところから物語は始まります。
自分の性指向に葛藤し、自分の恋心に怯え、それでも惹かれてしまう子がいる。
同じくマイノリティの性指向を持つ人々が多く集まるコミュニティに顔を出しながら、自分と、恋と、そして周囲と向き合っていく、そんなお話だと思います。
綺麗な絵で、残酷な現実がさらりと描かれるので、心にズシンときます。
心の表現がとても美しく、視覚表現なのに詩的だと思いました。
恋心の繊細さ、トキメキ、キラキラしたもの、そんな恋の甘酸っぱい素敵さも感じられる作品です。
公式サイトで試し読みもできるようなので、こちらもぜひ。
参照:作品詳細『しまなみ誰そ彼』鎌谷悠希 | 小学館の新青年コミック誌「ヒバナ」公式サイト
『桐生先生は恋愛がわからない』(完結済)―恋して当たり前だなんて、思われたくない!
こちらは、ちょっと番外編です。
ラブコメ漫画の作者であるアラサー女性が主人公。
ラブコメ漫画を描いてはいるけれど、“恋愛感情”がわらかない!そもそも、女性が恋愛好きなんて、誰が決めたの?
とやや拗らせている主人公ですが、アシスタントの年下男子と年上のアニメ脚本家に同時にアプローチされて、自分の恋愛感情について考えを巡らせていくラブコメです。
これが好きって気持ち?恋愛をすることが当たり前?私はどんな性指向なの?などど、”恋”という感情に悩める女性のお話で、人それぞれ、”恋”との付き合い方は違っていいじゃないと思える、面白くも、ちょっぴり沁みるストーリー。
『青のフラッグ』―君の笑顔を見ていたいって、思っちゃったんだよ。
最近の中でダントツのおすすめ漫画です。
主人公である太一は、なぜか苦手意識を持っていたヒロインの二葉から、クラスの人気者である桃真への恋心を打ち明けられ、協力してほしいと頼まれます。
高校3年生、同じクラスになった3人。それぞれの抱える気持ちは、どこへ向かっていくのか。
1巻ではそれぞれの気持ちの芽生えを見ることができ、今後の展開に、頭を悩ませることになります。胃も痛くなる。
まさに今の私がそれです。
少年ジャンプ+で連載中で、隔週水曜日更新なので、2週間が長い。どうにかしてくれ。
1話はWEBで読めますので、ぜひ。アプリで続きも読めます。
いろいろ読んで感じたのは、男女の恋愛は、数ある恋や愛のうちの一つの形でしかないのかなと。
私も小さい頃は、男の子のカッコよさに憧れ、かわいい服を着るのが恥ずかしく、スカートも嫌いな子どもでした。
いかにも“女の子”のように振る舞うのが、ただただ恥ずかしかった。
何でだろう?と考え続け、今すこしだけ分かったのは、私にとって“少女(girl)”は恥ずかしく遠ざけたかったものけれど、“女性(lady)”の気品や、美しさは憧れるものだったということ。
たぶん、子どもが考えられる、単純な「男」と「女」の2項対立でしか考えられなかった世界が、大人になるにつれて広がって、より自分に近いものを見つけることができたんだと思います。それでも、明確に“それ”と言葉で表すのは難しいけれど。
まあそんなこともあって、自分が知っている言葉に集約されない概念が、この世界の中にあるのは当たり前なんじゃないかと感じるようになりました。
言葉にして理解できれば確かに分かりやすいけれど、なかには、まだ言語化できていないものもあるんじゃないかと、そう思うのです。
多様な恋の作品たちをどう書くべきか悩みましたが、人が人を想い、悩み、葛藤する姿は、切なさを誘い、胸を鷲掴みにされるような苦しさを覚え、それでも見守りたくなるような優しさを感じさせてくれ、一つの答えがでた時に、安らかな涙をくれる。
今回紹介したのは、そんな作品たちだと思います。
最後はいつも「みんなが笑顔で幸せになってくれさえすれば良いから」と心が仏になる私です。