チョコタフと異世界への冒険

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『群青にサイレン』はとりあえず5巻まで読んでほしい

 

『群青にサイレン』がいよいよ面白くなってきた

 読むきっかけとなったのは、やっぱり『いちご100%』で河下先生の絵が好きだったからでして、その時はまさか、主人公がこんな思い悩む性格の子だとは思わなかったな。(河下水希桃栗みかん先生です)

加えて、野球漫画だから男の子メインだとはもちろん思っていたけど、『いちご100%』のイメージがあったから、ここまで少年たちの成長物語によった漫画だとは思わなかったです。

しかし、変わらず人物が美しく繊細に描かれていて、お話も野球部として、チームとしてゆっくりと機動しはじめてきて、楽しくなってきましたよ~~!

いいタイミングなので、今回は『群青にサイレン』の感想を整理したいと思います。

※~5/11まで1巻が期間限定無料で読めます! 

 

自分を好きになれない主人公

お話としては、主人公の修二が、かつて野球を辞めた原因となったイトコの空と高校の入学式で再会。そこで、自分よりも体の小さい空を見て、今度こそ野球で勝てると、二人は野球部に入部することになります。

空とはピッチャーのポジションを争うことになりますが、思うようにいかない修二は・・・。

 

という感じで、空に勝つことに執着し、妬み、嫉み、憎しみ、憧れが入り混じった複雑な感情をぶつけ、序盤はとにかく暗い暗い道を進んでいく主人公くんです。

1~3巻の途中くらいまでは、修二がこのトンネルを抜けられるのか、本当に心配でハラハラしていて、今思えばお話を楽しむ余裕がなかったかも。

 

自分の中にある”これだけは”ってもので、人に負けたくない。

私も負けず嫌いなので、その悔しさはとても分かるし、思うようにいかない自分に苛立つのも分かる。ただ、負けず嫌いなだけでは、ここまで屈折はしないと思うんです。

修二が辛いのはきっと、ピッチャーとして負けたくないという気持ちを、ストレートに何かにぶつけることができない所です。気持ちを昇華できていないのです。

「ピッチャー」という素質を、強くすることもできない。他人からも求められていない。空にも勝てない。それでも「ピッチャー」を手放すことができない。

気持ちを持て余し、ひたすら抱え込んでしまっている。

 

見ている方からしたら、別の道があるよ!と言いたくなってしまいますが、本人にしてみたら、そうやすやすと見切りをつけられない気持ちなんだろうな。

 監督は修二の抱えているものに気づいているんでしょう。

 

「もう十分傷ついただろう。それでもおまえはまだ戦い続けるのか?」

 

まさに修二のことを的確に言い表した言葉です。

自分から戦地に赴く。自ら傷つきにいく。傷ついたとしても、そこから逃げ出したら、自分を否定してしまいそうで怖い。修二はそんな状態なんだと思います。

 

それでも俺は 俺が思う「俺」になりたくて

 

修二はそう言って、「自分」を諦められないんですよね。

これまでは、そこから救われるのは空に勝つこと(ピッチャーになること)だったので、もう暗い暗いループですよ。

 

与えられた役割は、嫌でもチームに向き合うポジション

ところがどっこい。

キャッチャーという役割を与えられ(それでもまた悩みのループに入るわけですが)、それをキッカケに、野球と空と、それらに対する自分の気持ちに、今までとは違う角度で向き合うことになります。

少しずつ、本当にゆっくりとした歩みですが、「自分」が何になりたかったのか、何を大切にしたかったのかを、少し広い視野で考えられるようになったのかなと感じました。

抱えていた屈折した気持ちも「キャッチャー」として強くなることにぶつけられるようになったから、原動力として昇華できるようになったから、前を向けるようになったのかも。

また、空との関係においても、なかなか気持ちのぶつけ合いができていなかったから、そこも心配していたんですが、そちらも5巻で進展があったので、きっと雨降って地固まる、と願っています。

 

キャッチャーの役割を果たし、試合に勝つことで、自分を認めてあげられる。

まだそこまで気持ちに整理をつけられていないだろうし、道のりは長そうだけど、いつかそうやって「自分」を許してあげられますように。

キャッチャーは、ピッチャーと、そしてチーム全体にも向き合う存在なので、修二がキャッチャーとして成長する物語というのは、すごくいいなあと思います。

 

元気がなくなっていく友人・角ヶ谷くん

修二の中学時代の同級生で、一緒に野球部に入部した角ヶ谷くんという子がいるのですが、この子がまた、わたしの心をざわつかせます。

参照:◆連載作品紹介◆月刊YOU(登場人物紹介)

中学時代はリトルリーグで野球をしていて、なんでも卒なくこなす優等生タイプ。

黒髪メガネのセンター分けで、上品な顔立ちをしていて、よく思い詰めたような表情をします。何を考えているのかはまだ分からないけれど、修二のことかな?

修二がキャッチャーとして、空に歩み寄っていくにつれ、口数は少なくなり、修二の背中を意味ありげな視線で見つめることが多くなっているので、何か、気に入らないことがあるんだろうな。

修二の暗い過去も優しい表情で受け止めてくれましたし、なにかと隣にいて修二のことを見守っていてくれます。教室でも、合宿でも、部活でも、いつでも気にかけてる。(もう好きなんじゃないかな・・・と考えてしまうのはダメかしら?)

角ヶ谷くんが執着しているのは、修二なのか、キャッチャー(まさかピッチャー?)なのか、はたまたバッテリーなのか。

修二と角ヶ谷くんの関係、というよりも、角ヶ谷くんが修二に抱いている感情が気になりすぎる所存です。中学時代のエピソードと共に、角ヶ谷視点のお話も読んでみたいかも。

 

ところで、公式サイトの兼子キャプテンの画、もうちょっとカッコイイのにしてあげてください。

 

長い長い助走は、ムダなんかじゃない

ついつい、修二と角ヶ谷くんについてばかり書いてしまいましたが、空も、野球部の先輩も、他校の選手も、なにかとみんな抱えていて、それらが表に出てきて、関係が変化していって、お話はまだまだ動いていく気配を見せます。

感情の機微が、丁寧な絵に落とし込まれているので、たとえ無言でも、その「・・・」には何が含まれているんだ、とか、意味ありげな視線の意図とか、想像しながらドキドキしています。

悩んで、ぶつかって、挫けて、涙して。その先にはきっと、二人しかたどり着けない関係があるはず。今後、修二と空がどんなバッテリーになるか、どんなチームになるか、とても楽しみです。

 

この漫画自体も1~3巻くらいまでは、”今”と”これから”を楽しむための助走だったんじゃないかって思います。

修二が悩み続ける姿を見るのは読んでいて辛かったけど、そんな修二との時間を過ごしたからこそ、そこから抜け出そうとしている彼を心から応援したくなるし、これからの活躍を読んで、もっともっと面白くなるはず。手に汗にぎっちゃうんじゃないかな。

最近は展開が遅い場合でも、最初の1巻で物語的なカタルシス、つまり主人公が報われる作品が多いなかで、チャレンジングな展開だと思いましたが、だからこそ、私の中では印象に残る読書体験になりました。

 

 

そしてこれを書きながら、私は自分で思っている以上に修二のことを気にかけていて、好きになっていたことに気づく。角ヶ谷くんについては自覚があったんだけど、もう修二を放っておけなくなってしまったんだなー。

電子書籍を3ヶ月待つ心の余裕はなくなったので、せめて、2週間くらいになってくれたらなあと思います(単行本、買うけどもさ)