チョコタフと異世界への冒険

チョコタフが好きなゲーム・舞台・漫画・アニメ他への愛を語る場所。目指すのは究極のオススメ集。

『京騒戯画』を語ってみよう①

より楽しむために、これまでのことを整理してみますのコーナー。第一弾は#1まで。

#0と#1は前回の記事で扱ったのですが、お話の構造の話だったので、より中身にフォーカスしていきますよ〜。

#0「予習編」
この回では、視聴者が持つであろう疑問に対する答えは一切提示されなかったと言っていいでしょう。

ではどんな内容だったのか。それは事実を整理することしかできません。

  • 舞台が普通とは異なる世界である
  • 少女(コト)は「何か」を追っている
  • コトは二人の少年(阿・吽)を連れている
  • 以上の三人は明恵の家に「居候」
  • コトは「三人議会」によって処遇を決められる立場にある(言い換えれば「三人議会」はコトの処遇を決める権利を持つ)
  • 三人議会は「鞍馬」「八瀬」「明恵」で成り立っている
  • この三人は兄弟である(だが似てない)
  • 鞍馬は「ロボット」を所有している
  • 八瀬は「人間ではない」
  • 三人議会は「両親」に何らかの「執着」を持っている
分かるのはこんなところでしょうか。とはいえ、全ての項目の文頭に「なぜ」をつけてもこの時点では答えは出ません。例えば、「なぜ」「八瀬は人間ではない」のか、といった具合に。


これを解決していくのが#1以降の話です。

#1「ある一家の事情とその背景」
タイトルにもある通り、この回では「ある一家」が誕生し、そして別れるまでを描いています。

「ある一家」とはもちろん鞍馬、八瀬、明恵の三兄弟を含めた「家族」のことです。彼らの両親のことが明かされます。

時間を≪過去≫へと戻し、「京都」に住む一人の僧侶から物語は始まります。この「明恵上人」という男こそが、「父親」です。彼の姿は≪現在≫の「明恵」の姿そっくり。いえ、「明恵」が父である「上人」に似たのでしょう。そして名前も。

上人は、彼の描いた絵を具現化する能力を持っていたため、人からは距離を置かれます。犬一匹と共に暮らしていたところに、現れたのが、彼に恋心を抱く「古都」です。

彼女は、実は上人が襖に描いた「黒兎」が具現化したもの。古都は想いを叶えるため、彼女をずっと見守っていた仏様の姿を「借りる」ことにします。その姿が、銀色の髪の彼女です。そして必然的に、古都が「母親」になります。

二人の間にできた子どもは「鞍馬」「八瀬」「薬師丸」の三人。薬師丸は、おそらく「明恵」の幼い頃の名前です。幼い「薬師丸」が持っていた数珠を「明恵」が今でも持っていましたから。

そして薬師丸だけが人間です。鞍馬と八瀬は、古都同様に絵から生まれた存在。

こうして「ある一家」が「京都」に誕生したわけですね。

しかし特殊な一家であるがゆえに、京都を追われることになります。彼らが移住するのに選んだ先は、上人の描いた都「鏡都」です。

鏡都のすべては、その世界を作った上人と古都に決定権がありました。誰も死なず、誰も生まれず。そう薬師丸が話しています。

しばらく幸せに暮らしていましたが、古都はその人間の姿を仏様へ返さなくてはならないと涙を流します。そういう約束だから、私はここから去らねばならないのだと。

しかし上人は古都を一人で行かせず、共に姿を消すことになります。そうして「鏡都」に三兄弟が残され、彼らに「世界の決定権」が引き継がれました。それが「三人議会」となったのです。

また、両親が突然姿を消したため、再会を望み、「執着」しているのだと分かります。

以上が「ある一家」の顛末です。予習編で謎だった三兄弟や世界に纏わる事に、ほとんど答えを提示してくれました。

次の疑問は、

  • 三兄弟にとってのコトは何なのか
ということだと思います。コトについて明かされる#2を見ればわかりますね。これは次の記事にて。

疑問と答えのバランスが本当に絶妙な作品です。飽きさせない作り、と言うべきでしょうね。


さて、整理だけでは物足りないので、少しばかり感想をば。

#1で、上人と古都が鏡都を去る場面を「能舞台」で表現していました。これには思わず感嘆。能舞台を持ってくるとは!?という驚きを感じると共に、むしろそれ以外のどんな演出よりも的を得ている表現だと納得もしました。

どういうことかと言うと、「能舞台」は舞台のつくりに意味があるんです。

三兄弟が上がっているのは「本舞台」と呼ばれ、上人たちが歩くのは「橋掛り」です。

この橋掛りは、登場人物の入退場の際の通路となるだけでなく、物語の上でも意味を持つことがあります。ここではおそらく「異世界を繋ぐ橋」という意味。

つまり、「本舞台」を「鏡都」として、「橋掛り」が繋ぐのは「京都」であることを示しているのです。上人は正に、「鏡都」から(おそらく)「京都」へ去っている途中だということ。

また、「鏡板」と呼ばれる本舞台の背景も忘れてはいけません。この鏡板には、「老松」と呼ばれる永遠の背景が描かれています。この「鏡に描かれた永遠」とは、まさに「鏡都」ではないですかッ!本舞台を「鏡都」に見立てていることにも意味があったんです。

一瞬の絵に、ここまでの演出を盛り込まれたらため息しか出ません。これはほんの一例ですが、他にもハッとする絵作りをしているのがこの作品の特徴でもあります。上人と古都が去ることを決意した場面のなんと美しいことか…。


おはなしを読み解くのも、ただ絵を眺めているのも楽しいだなんて、贅沢。この贅沢こそがアニメの面白さだと言い切りたい!音、テンポ、動きまで加わることで、より、魅力が増している。ああ、素敵。


さあ、一度ここで幕を引きましょう。随分長く語ってしまいました。次からも、整理&感想の二本立てを予定しています。


おわり。